介護に携わる人は、資格を持っていないと現場で直接利用者の介護をすることができません。そのため、未経験であっても働きながら研修を受けて資格を取ることが必須です。ただ、介護の必要性が高まると共に必要とされるサービスも細分化しつつあり、国家資格だけではない民間資格で仕事の幅を広げることが求められています。資格があれば転職で有利になったり、資格手当が付くなどメリットもあります。そこで今注目の民間資格を詳しくご紹介します。
ケアのトレンドが大きく変わりつつある介護業界
特定の分野に特化した人材こそが必要とされている
介護サービスの現場は常に変化しています。特に注目されているのは、認知症の利用者に対するケアの資格やリハビリを目的としたレクリエーションに特化した資格です。
2009年に一般社団法人日本認知症コミュニケーション協議会によって認定が始まった「認知症ライフパートナー検定」は、症状の進行でコミュニケーションが難しくなる認知症の利用者に対し、非言語コミュニケーションや音楽のアクティビティを通し、その人らしく過ごせるサポートなどケアについての知識を認定するものです。
また、2014年に誕生した一般社団法人日本アクティブコミュニティ協会認定の「レクリエーション介護士」は、運動機能の回復や介護予防のためだけでなく、利用者に生きがいや日々の暮らしの喜びを持ってもらうこともレクリエーションの目的としています。
どちらの資格も介護を「利用者のサポート」で終わらせることなく、その人らしく生きるためのサポートを目的としており、これからの介護に置けるトレンドの変化から需要が高まることは間違いありません。
手当というよりも転職においてチャンスが生まれやすい
民間資格は国家資格とは違い、施設で資格を持っているから優遇されるということはほぼないのが現状です。
ただ、「認知症ライフパートナー検定」は1級から3級までありますが、1級の資格を持っている場合は優遇する施設も出てきています。
「レクリエーション介護士」はまだ新しい資格ということもあり、資格を持っているから有利になるということはまだありません。ここ最近にて急速に注目を集め始めた分野ということもあり、レクリエーションについて学んだことがないという介護士は多く、徐々に人気を集めています。
キャリアが長い方も勿論必要とされていますが、そういった特定の知識を持っている人材をピンポイントで必要とする職場も増えています。上手くマッチングが決まればやりたいことも伸ばせて、施設側としてもより充実したサービスが提供できるようになるなど良いことづくめとなるでしょう。
また今働いている職場でも、資格があることで仕事の幅を広げることにつながります。モチベーションやキャリアアップも目指せるため、資格を取得しておくのはおすすめです。
注目を集めている3つの民間資格についてご紹介
介護で必要とされるケアやサービスは、今後さらに細分化していくことが予想されます。また施設側でも独自のサービスを展開していく事業所が増え、より高度なケア能力や知識を持った人が優遇される方向に向かいつつあります。そこで今後スキルアップや高待遇の職場への転職を成功させるためにも、取得しておきたいおすすめの民間資格を3つご紹介します。必要となる費用や資格取得の方法についても説明しますのでぜひ参考にしてみてください。
医療ケアも可能な介護職員になれる喀痰吸引等研修
たんの吸引や経管栄養補給を行えるようになる資格
「喀痰吸引等研修」とは、痰の吸引や経管栄養を行える介護職員を育成するための研修のことです。ただしこの研修を受けたからといって、誰でもたんの吸引ができるようになるというわけではありません。あくまでも「利用者が日常生活を営むために必要」であると医師が判断し、その指示のもとに行える行為です。
さらに、事業者が登録喀痰吸引事業所として都道府県に届出をしていなければその施設でたん吸引や経管栄養はできません。それでも資格があれば、医療ケアができる介護職員として活躍できますし、仕事の幅が広がります。介護関係の施設だけでなく在宅サービスといった転職先の選択が広がる点も魅力といえます。
取得についての費用やおおよその時間について
「喀痰吸引等研修」は、「基本研修」と「実地研修」を受けなければなりません。研修は第1号から第3号まであります。取得で必要となる費用は、第1号研修で18~20万円、第2号研修で16万円、第3号研修で6万円程度です。ただし第3号研修(実地研修)が自分の働いている施設で可能な場合はその分費用は安くなります。
ただし講義や実地の研修を受ければいいというわけではなく、筆記試験の合格、実地研修での評価を受けて合格する必要があり、かかる時間は個人によって大きく変わります。
喜びや生きがいをもたらすレクリエーション介護士
特にニーズが高まっている”楽しさ”を伝える為の資格
「レクリエーション介護士」は、レクリエーションに特化した知識を認定する民間資格です。介護の現場でレクリエーションの重要性は高まりつつありますが、レクリエーションについての情報が少なく予備知識のないまま現場で働いている介護職も多くいます。また施設の側でも職員にレクリエーションの知識や技能を身につけて欲しいというニーズが高まっており、そういった声から「レクリエーション介護士」の資格が新しく生まれました 。レクリエーション介護士は単に知識があるというだけでなく、利用者に寄り添いケアをしながら、日々の生活を楽しめるお手伝いをすることも可能とプラスアルファの存在として多くの介護施設で重宝される人材となることが期待できます。
取得についての費用やおおよその時間について
「レクリエーション介護士」は2級と1級があり、1級は2級を取得することが必要です。2級は通信講座か通学講座のどちらかを受講します。受講後、選択式の試験を受け60点以上で合格となります。通信講座の場合、約3ヶ月の受講期間で費用は3万5千円程度必要です。
1級は通学講座を受講するか介護レクアカデミーの会員となり動画視聴による講座の受講が必要です。受講後添削課題を提出し試験を受けます。こちらも60点以上で合格です。さらに実技試験と現場実習も必要となります。すべての実技と筆記試験に合格し、必要書類を提出して認定となります。費用は通学講座の場合は団体にもよりますが10万円前後かかります。研修の日程などにもよりますが、資格取得までには半年程度必要です。
認知症ケアのプロを目指せる認知症ケア専門士
高齢者の5人に1人が発症するとされる認知症ケアの専門資格
「認知症ケア専門士」は2005年に一般社団法人日本認知症ケア学会によって創設された民間資格です。日本では認知症患者が急速に増えており、介護の現場でも認知症患者への適切な対応が求められています。この資格は更新制となっており、認知症への理解やケア、技術を深めるためにも必須の資格といえます。介護職だけでなく医師や看護師でも取得する人が増えている資格でもあります。
認知症の方への支援に悩む職員に対し、適切なケアのアドバイスや指導ができるといった点でも今後介護職の中でも重要なポストを任される可能性も期待されています。
さらに上位資格である「認知症ケア上級専門士」を取得すれば、リーダーやアドバイザーとして様々な施設から求められる人材を目指すこともできます。
取得についての費用やおおよその時間について
認知症ケア専門士の受験資格は、受験年の3月31日より10年の間に3年間の認知症ケア関連機関や団体での実務経験が必要です。1次試験の筆記、2次試験の試験と面接に合格すれば資格が取得できます。
実務経験がない場合には、「認知症ケア准専門士」の認定試験を受けることができます。
試験のための勉強法としては、オンライン講座やアプリでの勉強、また公式テキストを購入し独学で学ぶ、また受験対策講座の受講などがあります。ただし受験対策講座は開催場所が限られることに注意が必要です。
公式テキストは公式サイトで2,000円~から購入可能です。
試験は1年に1回のみ実施されますので、合格するまでにはそれなりに時間が必要です。
民間資格はやりたいことへの道を切り開くきっかけに!
介護職で働く場合には、介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修といった資格が必須です。また、職場で資格手当をもらえる資格として国家資格である介護福祉士を目指す人が多い傾向にあります。
ただ介護サービスは利用者の生活支援だけでなく、認知症ケアやリハビリといった専門分野の知識も求められつつあります。そういった中で、専門知識に特化した民間資格にも注目が集まっており、そういった資格を評価する施設も増えつつあります。
今回ご紹介した民間資格以外にも様々な資格がありますので、ぜひ一度調べてみてはいかがでしょうか。
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