介護サービスの利用者のうち3割の人が使っていると言われている訪問介護。高齢化にともなって介護全体のニーズが高まり、とりわけ在宅介護を望まれているご家庭が増えている中で、今後も訪問介護員の需要が高くなっていくのは間違いがないことでしょう。
介護職を目指すなら訪問介護事業所も就職先の選択肢に入れるとより裾野が広がりますが、実際に働き手としてはどうなのでしょうか?訪問介護員の仕事について考察してみました。
訪問介護員とはそもそもどんな仕事?
多くの介護職は特別養護老人ホームや有料老人ホーム、デイサービスなどの介護施設に勤務して利用者さまに介護サービスを提供します。訪問介護員は利用者さまの自宅に訪問して身体介護や生活援助といった介護サービスを提供します。
では他の介護職と仕事内容や労働環境にどんな違いがあるのでしょうか?ますは訪問介護員という仕事について知っていきましょう。
訪問介護員の基本
前述のとおり、訪問介護員は介護を必要としている高齢者の自宅に訪問し、日常生活の支援などを行います。「ホームヘルパー」とも呼ばれています。
仕事内容は大きく分けて「身体介護」「生活支援」「通院介助」の3つです。身体介護は食事や入浴、着替え、排泄などの介助を行います。生活支援は掃除や洗濯、買い物など身の回りのお世話をする仕事です。通院介助は病院に通う際の車の乗り降りや受付、お会計などの手続きのサポートを行います。事業所によっては訪問介護員が病院まで自分で運転して行くこともあります。
身体介護は施設で働く介護員も行いますが、訪問介護の場合は利用者さまの自宅で行わなければいけないため、その家のつくりや配置などに配慮する必要があります。
訪問介護員に期待されている大きな役割は生活支援。利用者さまが自宅でも自立した生活が送れるようサポートすることが重要です。掃除や洗濯、料理などの家事を行うので、家事代行サービスのように見られることもありますが、訪問介護員はあくまでサポートする立場。できることは自分でしてもらい、できない部分をお手伝いする。そういった姿勢が求められます。
訪問介護員で働く人のデータ
現在、日本では46万人もの訪問介護員が働いていると言われています。介護労働安定センターの『平成30年度 介護労働実態調査結果』によると、平均年齢は54.3歳。20代は1%程度と非常に低く、若手がほとんどいない職種であると言えます。また、男女比を見てみると9割が女性で、男性はごく少数派です。また、就業形態について正規職員が2割程度。8割近くが非正規職員です。
厚生労働省が発表した平成30年度『年賃金構造基本統計調査』によると平均年収は327万円。日本人の平均年収は441万円ですから、給料は高いとは言えないのが実情です。その理由としては、やはり非正規職員が多いことが考えられます。
ただし訪問介護員は女性が多いことから、家事と両立しながらパートやアルバイトとして限られた日数・時間で働いている方が多いため平均を押し下げられているという側面もあります。
正規職員である程度キャリアがあれば年収も高くなると考えられます。
訪問介護員として働くメリット・デメリット
どんな仕事にもメリットとデメリットがあります。訪問介護員(ホームヘルパー)として働くことで、どのような良い点があるのでしょうか?デメリットはないのでしょうか?それぞれ考えていきましょう。
メリットについて
まず挙げられるのは他の介護職員よりも自由に働けるという点です。訪問介護には「登録ヘルパー」という独特の雇用形態があります。予め、「この日にちのこの時間帯なら働けます」というように事業所に自分の都合が良い日時を申告し、その時だけ働くことが可能です。事業所によっては自宅から利用者さまの自宅に直接行くこともできます。そのため、かなり柔軟な働き方ができるのです。
また施設では他のスタッフと連携しながら仕事をする必要があります。人間関係で悩んだり、ウマが合わない人と我慢しながら一緒に働かなければいけなかったりといったこともあり得るでしょう。訪問介護は個人で仕事するので、人間関係やしがらみを気にする必要はありません。そういた意味でも自由に働けると言えます。
自分も一人、利用者さまも一人なので、介護という仕事に向き合うことができます。利用者さまに寄り添い、ご本人と自分が納得できる方法で介護をしていきたいと考えている方にはうってつけです。介護自体は一人で行いますが、問題点や迷ったことなどがあればケアマネージャに相談することもできます。
デメリットについて
介護施設であれば建物や設備が介護しやすいようなつくりになっていますが、訪問介護は利用者さまの自宅で行うので、必ずしも介護がしやすい環境が整っているとは限りません。家庭によって家のつくりや環境が大きく異なるので、対応に苦労することもあります。また、基本的に1人で介護するので誰も助けてくれず、大きな責任がのしかかり、プレッシャーを感じることもあるかもしれません。
加えて利用者さま本人だけでなくご家族とも接する機会が多くなります。介護に対する考え方は人それぞれ。必ずしも「ありがとう」と言ってくれる方ばかりではありません。介護という仕事にじっくりと向き合える反面、理想と現実とのギャップを感じることも多々あるでしょう。ある意味、メリットで挙げたことがそのままデメリットにもつながると言えます。
他にも移動が多い仕事なので、体力的に大変だと感じることもあるかもしれません。
訪問介護員の今後の可能性や適正について
今後ますます需要が伸びていくと考えられる訪問介護員。今後仕事内容や待遇はどうなっていくのでしょうか?将来性は?訪問介護員のこれからを予測します。その上で、ご自身が訪問介護員に向いているかどうかについても考えてみましょう。
現状ですらすでに追い付けていないほどの圧倒的な需要増
冒頭でもご説明したように、高齢化の影響や在宅介護のニーズの高まりで訪問介護員の需要も高まっています。加えて介護施設が定員オーバーで入居できず、在宅介護を選択せざるを得ないご家庭も急増していて、現状でも訪問介護事業所の人材不足が深刻化しています。
益財団法人介護労働安定センターの『令和元年度 介護労働実態調査』によると、訪問介護事業所の8割が「人手不足を感じている」と回答。人手が確保できずに倒産してしまう事業所もあるほどです。
介護保険制度の改正によって、体温・血圧測定や爪切り、カテーテルの準備など、訪問介護員の業務内容も拡大しています。少ない人数で、効率よく多くの役割を果たしていかなければいけない。これが訪問介護員の実態です。
しかし国もこの現状を把握していて、改善に舵を切り始めています。2020年にはコロナ禍の影響も相まって特例を出すなど、訪問介護員の待遇改善策を打ち出しています。
前述のとおり、今は正直訪問介護員の待遇は良いとは言えないでしょう。しかし人材の確保と定着が急務であるので、今後訪問介護員の待遇は徐々に改善されていくと考えられます。
ホームヘルパーに向いているのはこんな人
訪問介護員は利用者さまとじっくり向き合う仕事です。ただ介護を作業的に行うだけでなく、「どうやったら利用者さまが自立した生活を送れるのか?」といった視点で物事を考えられ、ときには人を元気づけられるという前向きな方が向いています。
利用者さまの個性やご家庭の考え方、自宅の環境に対応できるだけの柔軟性も必要となります。1人で介護を行うので、「生命を預かっている」という責任感も必須です。
介護は力仕事という側面もあり、それに加えて移動も多いので、体力も必要となってきます。
訪問介護は精神面でも体力面でもタフさが求められる仕事です。
まとめ
訪問介護員の仕事は決して甘いものではありません。業界全体で考えてもしばらくは大変な状況が続くでしょう。しかし政府内では訪問介護の報酬の見直しも提言されていますので、将来的には待遇アップも十分期待できます。何より訪問介護には介護施設では味わえない魅力もたくさんあります。
介護という仕事に本気で取り組みたい、利用者さまのことを考えた介護をしたい。そういった方は訪問介護も検討してみてはいかがでしょうか?
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